美しくあるために

子供の頃、いつも元気に外を飛び回っていた私は、色黒でショ

ートカットのせいもあり、よく男の子に間違われ、母とお買い

ものへ行き、母が知人と出会い、立ち話をしている際には、側

立ってる私の顔を見て、男の子だと思い、スカート姿の私

に気づき「あら、女の子だったのね」と言われることも決して

いことではなく、中には、「お母さんに似ると、美人だっ

たのにね~。残念ね~」とまで言う人もおり、子供心にも傷つ

いたものでした。

 

小学校高学年になり、すっかり女の子らしくなっているものと

思っていたら、同級生の女の子数人に「男子に生まれるべきだ

ったよね」や「男子だったら、絶対にかっこよくて凄くモテた

と思うよ!!」と言われ、ちっとも変わっていないのかと、がっかりとした記憶があります。

 

どうしたら、女性らしく見えるのだろうかと小学生ながら悩んでいると、TVで男性が女性に「美しい女性になるには?」と質問をし、「外見だけを綺麗にしてもだめです。内面が美しくなければ、決してきれいな女性にはなれません」と言っており、子供の私には「ん??」と納得がいかず、聞き流していたところ、数日後にまた違う男性が、違う女性に同じ質問をし、同じ返答をしているのを目の当りにし、「そうなのか!!」とやっと納得したことを覚えています。

 

先日拝見した、「芭蕉布作家」で人間国宝の平良敏子氏は、92歳の今もなお、生まれ育った沖縄で、原料となる「糸芭蕉」をご自身で栽培し、3年かけてできあがった木の伐採もご自身でなさり、通常捨てられていた外側の固い樹皮を使って、ネクタイやバックを作り、帯の制作にも初めて取り組むなど、勢力的な日々をお過ごしですが、お若い時には「芭蕉布」作りにうんざりし、お花かお茶の先生になりたかったそうですが、終戦後に戻った沖縄に糸芭蕉の木が1本も無く、なんとか沖縄にまた糸芭蕉の木をとの思いから、復活させたそうです。

 

繊細な糸を乾燥させないよう湿度を80%に保つ中での作業になり、3年半もの歳月を要する着物の人気は高く、「織りは心」「心が穏やかじゃないと良い製品は作れない」とおっしゃり、「少しでもなまけない」と言うお姿には、「内面を磨いた人」にしか持てない美しさがあり、佇まいや話し方にも品格が漂い、年齢とともに外見に気を配ることも大切になりますが、個人的には、受け入れることもまた大切になり、やはり内面を磨いた人の持つ、美しさに優るものはないのでは、と思います。